神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜
俺にそう聞かれたベリクリーデは。

「…?これ何だっけ、クロティルダ。…じゅーにふたえ?」

「十二単衣(じゅうにひとえ)だ。我が姫」

「おぉ、それだそれ!」

…十二単衣だと?

ベリクリーデは、赤や黄色や紫色などの、大きな布を何枚も被っていた。

「ジュリス知ってる?じゅーにひとえ。いっぱい色んな色の布を着るんだって」

「いや…。…十二単衣は知ってるけど…」

ベリクリーデが、十二単衣なんて知ってるはずがない。

つまり、吹き込んだ奴がいるのだ。

クロティルダという、ベリクリーデに余計な知恵を仕込んだ奴が。

「…お前、ベリクリーデに何を言った?」

「?我が姫に、聖魔騎士団副団長が昔の伝統衣装を着ていたと聞いた」

シュニィの浴衣のことか?

「今度ジュリスと花火大会に行くから、自分も同じ衣装を着たいと」

「…」

「聖魔騎士団副団長がどんな格好をしていたのか知らないが、古き良き伝統の衣装と言ったら、恐らくこれだろう」

…で、十二単衣を着せようと?

「今、何枚着てるんだっけ?」

「今は五枚だ。あと七枚だな」

「よーし、頑張ろう」

…この、馬鹿共が。

ベリクリーデも気づけよ。写真の中のシュニィは、十二単衣なんか着てたか?違うだろ。

いや、悪いのはクロティルダだな。

ベリクリーデに十二単衣なんて吹き込んだ、このクロティルダが悪い。

…それから。

…もっと早く、ベリクリーデの様子を見に来なかった俺も。
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