神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜
案の定、俺の不安は的中することになる。

ベリグリーデが俺の部屋を出ていってから、二時間ほど経った。

「んー…。ようやく終わった…」

長かった書類仕事が、ようやく片付いた。

窓の外を見ると、丁度綺麗な夕焼けが見えた。

良かった。今日は残業せずに済みそうだ。

ちょっと、お茶でも飲んで一服するかな…と。

油断していたところに、突然やって来た。

「ジュリス隊長っ…!ジュリス隊長、大変です!」

「…!何だ、どうした…!?」

俺の部下が、泣きそうな顔で部屋の中に飛び込んできた。

出たよ。またこの流れ。

またベリクリーデが何かやらかしたんだろう?

いつもそうじゃん。

もしこれでベリグリーデ案件じゃなかったら、俺は隊舎にいる全員に酒を奢っても良い。

「どうしたんだよ?何があった?」

「そ、それが…ベリクリーデ隊長が…」

ほらな。言わんこっちゃない。

「隊舎のうらぐ、ん?」

「うらぐ?」

部屋に駆け込んできた部下は、何かに躓いて足を止めた。

何かと思って足元を見ると。

そこには、ベリクリーデがさっき置いていった、可愛らしい着せ替え人形セット。

それを見た部下は、目を真ん丸に見開いた。

…あ、なんか嫌な予感。

「こ、これは…もしかして…」

「…あのな、ちょっと待て。違うんだぞ。それは、」 

「ジュリス隊長の…隠れたご趣味…!?」

ちょっと待ってくれって。それは盛大な誤解だ。

「やめろ、違う。それはベリクリーデが勝手に…」

「いや、あの、良いんですジュリス隊長。その…趣味は、人それぞれですから…」

おい。そう言うならせめて、俺の目を見て言えよ。

あと、違うから。

…はぁ、もう良い。

誤解を解く為に努力する方が疲れる。

「…で、うらぐ、って何だよ。裏口か?」

「あ!そうだ…。はい、隊舎の裏口で…ベリクリーデ隊長が…」

「あの馬鹿、今度は何をした?」

「…通りすがりの隊員を、捕獲してます」

「…」

…何?

あいつ、前世ライオンか何か?
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