神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜
「…しょぼーん…」

ベリクリーデちゃんは、何やらショックを受けて落ち込んでいるようだった。

…なんかあったのかね?

「旦那は何処だ?姿が見えないぞ」

「そうですね…ジュリスさんは自分の部屋でしょうか?」

おいおい、ジュリス。お前、嫁ちゃんがこんなに落ち込んでるっていうのに。

何処で何やってんだよ。

「どうする?ルイーシュ…。声をかけるべきだと思うか?」

ベリクリーデちゃんに声を掛けるか否か。これは非常に重大な問題だ。

そして、危険な賭けでもある。

…え?同僚なんだから声くらいかけてやれよ、って?

甘い。その考えは甘いぞ。

いかに同僚と言えど、君子危うきに近寄らず、って言葉もあるしな。

下手に近寄らない方が良いことってのもあんの。

…え?薄情?

うるせぇ。

「そうですね…。…下手に関わって、後でジュリスさんと事を起こしたくないですしね」

「だよなぁ…。…最近は、何処ぞの天使もいるしな」

幸い、ベリクリーデちゃんの方は、俺達の存在にまだ気づいてないみたいだし。

見なかったことにして、隊舎の中にトンズラしようかな。

…と、薄情なことを考えていたのだが。

次の瞬間、俺のそんな卑怯な試みは塵と消えた。

「…ぐすっ」

ベリクリーデちゃんの目に、じわっ、と涙が浮かんだのを見てしまったからである。

「おいおいおい!ベリクリーデちゃん大丈夫かっ!?」

ついさっきまで逃げようとした俺だったが、ベリクリーデちゃんの涙を見て、逃げることなど出来なかった。

俺は、慌ててベリクリーデちゃんに駆け寄った。

そして、普段は面倒事から逃げることしか考えていないルイーシュも。

「どうかしましたか。ベリクリーデさん」

さすがに、泣いているベリクリーデちゃんを無視することはしなかった。

俺と同じように、ベリクリーデちゃんに駆け寄ってきた。

「あ…。キュレム、ルイーシュ…」

涙を浮かべたベリクリーデちゃんが、俺とルイーシュに気づいた。

「どうした?どっか痛いのか?ジュリスになんか言われたのか」

「…んーん」

違うらしい。

まぁ、仮にジュリスがベリクリーデちゃんを泣かせたのだとしたら。

その時は、俺がジュリスをぶん殴ってやるよ。

「じゃあ、何で泣いてるんだ?」

まさか目やにが入った訳じゃないよな?

「…ぐすん」

…やっぱり、なんか落ち込んでるみたいだ。

いつもは、ぽやーんとした表情でいることが多いから。

こうして感情をあらわに泣いているところを見ると、余計に危機感を感じる。

…これはヤバいぞ。

俺達で何とかしてあげられるなら、そうしてあげたいのは山々だが…。

…残念ながら、俺達の信用度では、ベリクリーデちゃんが泣いている理由を打ち明けてくれるとは思えない。

やはり、ベリクリーデちゃんの「専門家」に任せるしかないだろう。

「…よし、ルイーシュ。行くぞ」

「分かりました」

俺達は、ベリクリーデちゃんを「専門家」のもとに連れて行くことにした。
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