神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜
しょんぼりするベリクリーデを、全力で慰めた、その翌日。




事件が起こる。






「…あいつ、大丈夫かな…」

一晩明けても、俺はベリクリーデのことが気になっていた。

昨日…随分落ち込んでたもんな。

一生懸命慰めたつもりだけど、親のいない寂しさっていうのは、そう簡単に埋められるものじゃない。

居ない者は居ないんだから、割り切って考えられれば良いんだが。

それが出来たら苦労しないんだよ。

親を殺されたかのごとく、って例え話があるくらい、親の存在っていうのは大事だからな。

…いや、ベリクリーデが誰かに親を殺されたのかどうかは、知らないけど。

…とにかく、俺がいくら優しい言葉をかけても、本当の意味で、ベリクリーデの慰めにはなってないってことだ。

俺の言葉なんて、所詮気休めに過ぎないもんな…。

シュニィに悪気がないのは百も承知だから、文句を言う宛もない。

ベリクリーデ自身が、何とか乗り越えるしかない問題だ。

…大丈夫かな。ベリクリーデの奴…。

もう午前10時を過ぎているのだが、今日はいっこうに、ベリクリーデが姿を見せない。

朝食を食べに食堂に行った時も、いなかったしな…。

…ますます心配。

まさか、まだ部屋で落ち込んでるんじゃないだろうか。

「…くそっ…」

何で、俺がこんな心配をしなきゃいけないんだ。

でも仕方ないだろ。心配なものは心配なんだよ。

どうせこのままじゃ、気も漫ろ(そぞろ)で、仕事が手につかないし。

ちょっと…様子を見に、ベリクリーデの部屋に行ってみよう。

俺はやりかけの仕事を放り出して、ベリクリーデのもとに向かった。
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