神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜
そういや、ベリクリーデちゃんが怒ってるところ、見たことないな。

大抵いつも、ぽやーんとしている。

多分、出会い頭に「ばーか!」とか言われても。

「ほぇ?」って、首傾げてそう。

故に、ベリクリーデちゃん本人は、別に怖くない。

むしろ、彼女を怒らせられる人がいるなら、見てみたい。

…しかし。

出会い頭に「ばーか!」なんて、無礼なことを言おうものなら。

ベリクリーデちゃんの隣にいるあの男が、黙ってない。

「ベリクリーデちゃんは怖くない。…本当に恐ろしいのは、ベリクリーデちゃんの相棒のジュリスだ」

「えっ…。じゅ、ジュリス…さん?」

君達、ジュリス知ってる?

この聖魔騎士団にいれば、多分すぐに出会えると思うぞ。

「命が惜しいなら、ベリクリーデちゃんに手出しはしないことだ」

「あと、この魔導隊舎、裏庭にバナナを植えてあるんですけど、あれはジュリスさん達が植えてるものなんで、勝手に触っちゃ駄目ですよ」

またしても、補足するルイーシュ。

「バナナ…?」

「なんで、魔導隊舎でバナナを植えてるんですか?」

ごもっとも。

…なんでなんだろうなぁ?

あれはベリクリーデちゃんがバナナジュースを…っていう話は置いといて。

「…とにかく、悪いことは言わないから、ベリクリーデちゃんには優しくしとけ。ジュリスを怒らせたら怖いぞ」

「普通に良い人なんですけどね、ジュリスさん。ベリクリーデさんが絡まなければ」

それなんだよ。

おおらかだし寛容だし、面倒見も良いんだけどな、ジュリスは。

滅多に怒らないけど、ベリクリーデちゃんに関することとなると、あいつ目の色変わるから。

それに、最近のベリクリーデちゃんには…人外生物の元カレがいるからな。

人様に対する悪口や陰口は、心の中にそっと隠しておくべきってことだな。

それが大人ってもんだろ?

「じゃあ…3つ目は…?」

と、恐る恐る尋ねるメタク君。

おぉ、よくぞ聞いてくれた。

また誰かに対する悪口はやめておけ、という助言なのかと思っただろう?

違う。

大事な3つ目の心得は。

「食堂の日替わり定食は数量限定だから、食べたい時は早めに行けよ」

「…それだけですか?」

「あぁ、それだけだ」

…でも、大事なことだからな。

忘れずに、早めに食べに行けよ。…俺との大事な約束だ。

以上。聖魔騎士団魔導部隊に就職したら気をつけるべきこと。三箇条。

覚えて帰ってね。
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