空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
「生きて、ここにいられて良かったって、今、改めて思いました」

 言いながら目頭が熱くなる。泣きそうになっているのを誤魔化したくて、私は頑張って笑みを浮かべた。
 すると凌守さんは私の心を慮るように、とびきり優しく微笑んでくれる。

 そんな彼の優しさに、胸がじわんと解けてゆく。同時に、胸の中に芽生えた気持ちがあふれ出してくる。
 ドキドキと鳴る心臓の音が、今はとても心地良い。

 しばらく互いに笑みを交わし合いながら、残りのコーヒーを頂いた。
 やがて飲み終わると、凌守さんは立ち上がった。 

「そろそろ、帰りましょうか」

 彼のその声が寂しいと思うくらい、私はもう、彼に恋をしてしまっていた。
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