空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 誰もいなくてほっとすると、同時に頬がにまにまと緩んだ。明日は凌守さんとの約束の日だ。

 それにしても、マルマロスビーチとはどういうことだろう。浜辺で、一体何を?

【分かりました。何をするんですか?】

 返信すると、すぐに返事が来る。

【船に乗ってみようかと】

 その文面に、心臓が嫌なふうに震えた。

 だけど、こんなことで怖がっていてはいけない。私は一週間後、アルカディアポートの桟橋から出る遊覧船に、仕事で乗らなければならない。

【ありがとうございます】

 凌守さんがいるから、大丈夫。
 そう、自分に強く言い聞かせたけれど、なかなか胸のぞわぞわは消えなかった。
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