空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
「先程船に乗ろうとした時、このペンダントを海に落とした彼女の意地悪い声が、脳内に響いたんです。私なんか、生きていたって無駄だって。それで怖くなって、余計に足が竦んでしまいました」

 言いながら色々な感情がこみ上げ、目からこぼれそうになった。下唇を噛み、必死に涙をこらえる。
 俯いたまま黙っていると、凌守さんがぽつりとこぼした。

「酷いな、そいつ」

 思わず顔を上げる。彼は眉間に皺を寄せ、険しい顔を海に向けていた。

 だけど、一番悪いのは私の父だ。その思いがあるから、彼のように麗波に怒りを向けられない。
 私は、御船伊一家に助けてもらったのだ。

 私はもう一度ペンダントを握りしめた。

「もう、大丈夫になったと思ってたんですけどね」

 彼が怒りを顕わにするのに耐えられず、私は口を開いた。
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