空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
「凌守さんが、このペンダントを希望だって思わせてくれたから。凌守さんが寄り添ってくれたおかげで、少しずつ昔のことを思い出せたから。だから、もう麗波のことなんて、乗り越えられたと思ってました」

 言いながら苦しくなる。だけど言葉にしたら、思考が整理された。実際、今私はここに立てているのは、このペンダントと凌守さんのおかげだ。

「凌守さんとこのペンダントは、私の希望です。だから、乗り越えないと、ですね」

 真っ直ぐに前を向く。小舟が海に浮かんでいる。
 私も、あれに乗れるようにならないと。

 そう思っていると、凌守さんが口を開いた。

「そのペンダント、よく握っているなと思っていたんです。あなたの、希望だったんですね」

 私は頷いた。そういえば、凌守さんにはこれが『母の形見』だとしか伝えていない。

「あの日、凌守さんはこのペンダントが私の居場所を教えてくれたとおっしゃいました。それから、生きなくてはいけないんだと思わせてくださった。あなたのあの言葉に、私はすごく救われたんです。それからは、このペンダントは私の希望です」
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