空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 麗波は彼の言葉を無視し、私に軽蔑の目を向けた。

「あら、もう恋人がいるの? 切り替えが早すぎるんじゃない?」

 麗波はそう言うと、与流さんの腕にべたべたとすり寄る。

「こんな女、さっさと別れて正解だったわね、与流さん」

 麗波はそのまま、上目遣いで彼を見つめる。与流さんはまんざらでもない顔をして、「ああ」とだけ零した。
 それから彼は、ばつの悪そうな顔を私にちらりと向ける。

「お手洗いに行ってくるよ、麗波さん」

 与流さんはそう言うと、逃げるようにその場から去って行った。麗波はそれを見て、小さく舌打ちをする。

「麗波って……お前、まさか!」

 凌守さんは彼女の名を聞き逃さなかった。睨むように、麗波に鋭い視線を向ける。
 しかし彼女は彼に向けられた視線を厭わず、お嬢様然とした笑みを浮かべた。
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