空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
「私のこと、ご存知なのかしら? 光栄ね。そう、私は御船伊重工の娘、御船伊麗波よ」
「御船伊重工……イデアルヴィアをM&Aした……」

 麗波は彼の口から零された言葉に満足したようで、ニヤリと意地悪く笑った。思わずひっと肩が吊り上がる。

 しかしそんな私の横で、凌守さんはなにかを考え込むように険しい顔をする。それから、ゆっくりと口を開いた。

「全部、お前のせいなのか?」

 凌守さんの声は、怒りを孕んでいた。しかし麗波は、笑みを浮かべたまま自信たっぷりに言う。

「何のことかしら?」

「八年前、海花さんのペンダントを海に落とした。イデアルヴィアを買収し、海花さんをこの街に異動させた。なんの恨みがあるのかは知らないが、海花さんを陥れようとしている」

 麗波は動揺したようだったが、それは一瞬。すぐに笑みを浮かべる。
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