空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
「だから、凌守さんが『海を軽く見るな』と言う度に、申し訳なく思ってました。ずっと黙ってて、ごめんなさい」

 私は凌守さんに頭を下げた。
 このことを知られてしまっては軽蔑されてしまうかもしれない。悔しさと、悲しさをぐっと飲み込み、膝に置いていた拳に力を込めた。

 すると凌守さんが、静かに口を開く。

「でもそれは、アイツが海花さんに酷いことをする理由にはならないでしょう」

 アイツとは、麗波のことだろう。凌守さんは父のことを打ち明けてもなお、私を守ってくれようとしているらしい。だけど、私には御船伊家に負い目がある。

「私、御船伊家に助けて頂いたんです。御船伊家は高校受験に失敗した私を援助して、名門校に通わせてくれました」

 言いながら、声が震えた。目頭が熱くなるけれど、自分のことで泣いてはいけないと踏ん張る。

「彼女にも、色々と思うことがあるのでしょうから。私が我慢して済むなら、それでいいんです」
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