空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 海風が運ぶ潮の香りと、彼の柑橘系の爽やかな香りが混ざり合う。それが安心感をくれて、私の涙腺を緩ませる。
 彼の優しさを受け取ってはダメだと思うのに、離れたくない。

「あなたはやっぱり、強い人だ。たくさんのことを乗り越えて、生きている。つらかった分、今はたくさん泣いてください」

 そんなことを言われたら、余計に涙が止まらない。

「私のこと、軽蔑しないんですか? 海を軽んじて事故を招いた、機関士の娘なんですよ?」

 涙ながらに言う。すると彼は、私を包む力を、少しだけ強くした。

「海花さんは、海花さんでしょう」

 その言葉に、再び涙腺が崩壊してしまい、涙が全然止まらなくなる。彼は、私を包むその手で、優しく背をさすってくれた。

「あなたは一人で、すごく頑張ってきた。だから、今は甘えてください。きっと、バチはあたりません」

 彼がそんなことを言う。
 私は、自分の心が今日の海のように凪ぐまで、彼の胸の中で、赤ん坊のように泣き続けてしまった。
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