空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
『あのペンダント』とは、母の形見のペンダントだ。当たる光の種類によってその色を変える不思議な宝石、〝ベキリーブルーガーネット〟が埋め込まれている。

 このペンダントは、海の大好きだった母を、父と過ごした幸せな日々を思い出せる、家族の思い出の詰まったもの。私にとって、大切なものだ。

 幸華さんは私をドレスに着替えさせた後、髪を結い上げると、私がペンダントを着けるのを見届ける。
 そしてそのまま、会場となる船の出るターミナルまで、車で送ってくれた。

 ここまでしてもらって、今さら「行けません」なんて言えない。私は意を決して、船に乗り込んだ。

 しかしすぐ、麗波に何か言われたらと思い、鞄にペンダントを隠した。
 母のペンダントだけは、家族の思い出があるこれだけは、麗波に侮蔑されたくない。
< 13 / 210 >

この作品をシェア

pagetop