空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
「そうだ。先ほど、麗波に恋人だと勘違いさせたままにしてしまいましたね、すみません」

 今までも、何度か恋人同士だと勘違いされたことはある。その度に否定してきたが、麗波には勘違いされたままになってしまった。

 そのことが、申し訳ない。彼はただ、私の『海への苦手意識を克服する』お手伝いをしてくれているだけなのだ。

「いいですよ、そんなこと。海上保安官として、彼女の行為は許せないものでした。だから、そのことを否定するよりも、彼女に非を認めてもらいたかったんです」

 そこまで言うと、凌守さんははっと息を呑む。

「すみません、彼女に恋人じゃないと否定できなかったの、俺のせいですね」

 そう言って、彼は伏し目がちにため息をこぼした。

「麗波は私を憎んでると思うんです。だから、恋人と思われたままだと、もしかしたら凌守さんにも何かしてくるかもしれません。だから、その……」

 気をつけてください、と言えればいいのだけれど、言えなかった。それでは、あまりにも無責任すぎる気がしたのだ。
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