空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 元はといえば、私のせい。私が、彼の提案してくれた『お手伝い』を断っていれば、こんなことにはならなかった。

「俺の身を、案じてくれているんですね」

 凌守さんの優しい声色。私はコクリと、俯いたまま頷いた。

「大丈夫ですよ。俺、そんなにやわじゃないですから」
「でも――」
「平気です」

 凌守さんが私の言葉を遮りそう言って、不意に立ち止まる。私もつられて立ち止まると、凌守さんは私の顔をじっとのぞき込んできた。

「海花さんの『でも』はいつも優しい。だけど、俺のことはもっと信頼して、安心して身を預けてくれてもいいんですよ。俺、ちょっとやそっとでやられるような体でもメンタルでもないんで。こう見えて、数々の海難現場、経験してますから」

 真剣な瞳が、私の目を覗き込む。私は目が腫れている事も忘れ、惹き込まれるように彼の瞳をじっと見つめ返した。
< 131 / 210 >

この作品をシェア

pagetop