空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
「俺はあなたを苦しめる、彼女のほうが許せない。海上保安官として、挑まれたら正々堂々と倒すだけです」

 凌守さんはそう言うと、急にニカッとおどけたように笑って、グーパンチを前に突き出す。

 そんな彼の様子に、思わずくすりと笑ってしまった。すると、そんな私に満足したように彼も笑みをこちらに向ける。

「だから、心配はいりません。それに、どちらかというと――」

 彼は言いながら、頬をほんのり染める。だけど、こちらを見つめる優しい瞳は、どこか真剣な色をしていた。

「俺が、あなたを守りたいんです」

 彼の真剣な声色に、心がとくりと反応する。勘違いしてはいけない。彼は、海上保安官だからこういう言葉を投げてくれるのだ。
 分かっているのに、彼の言葉を脳が自分のいいように解釈して、私の鼓動を加速させる。

「守らせてください、海花さん」

 彼の言葉を、受け取っていいのか。彼のそれを、海上保安官としての言葉ではなく、恋心を意識した私が受け取っても――。
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