空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 彼女の声が低く鋭く、私を睨みつける。私はひっと息を呑み、こんな顔をしてはダメだと慌てて頭を下げた。
 だけど、いくらそう言い聞かせても胸がバクバクと鳴る。心臓は正直だ。

 こんなのではだめだ、今は仕事中なんだから。
 どうしたらいいのか、考えろ。
 自分に言い聞かせ、必死に頭を巡らせる。

 頭上で麗波のため息が聞こえ、心臓の音が加速したが、つとめて冷静に頭を働かせた。

「やっぱり、犯罪者の娘はクズね。使えない」

 麗波がぼそっと放った言葉が、ナイフのように胸に突き刺さる。

 だけど、負けちゃダメだ。彼女と私の間になにがあろうとも、今は彼女はお客様。コンシェルジュとして、最高のサービスを提供するんだ。

「お客様」

 私は言いながら、顔を上げた。ポケットに忍ばせたペンダントに触れ、脳裏に凌守さんを思い浮かべながら。

「大変申し訳ございませんが、お部屋へのご案内は致しかねます。ご予約の際にも、チェックインのお時間は確認されていることと存じます」
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