空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 麗波をじっと見ながらそう言うと、彼女は少し怯んだように言葉を返してきた。

「ま、まあそれは、分かってるけど。でも、私はただの客じゃないわ。御船伊重工の、令嬢なのよ? このホテルのグループの、社長の娘なのよ」

 彼女はそう言うと、私に顔を近づける。

 怯むな、私はコンシェルジュ。勇気を、出せ。
 自分に言い聞かせ、麗波から視線を逸らさないで言う。

「でしたら、ご存知ないですか? 当ホテルのスイートにご宿泊のお客様は、最上階のラウンジの個室もご利用いただけます。それに、客室以外の施設も当ホテルは充実しております。例えば、麗波様でしたらこちらの――」

 言いながら、パンフレットを取り出し、サロンやスパを紹介する。
 お客様がゆったりしたいなら、それを提供するのが私の仕事だからだ。

 だけど、声が震えてしまう。

「ねえ、ちょっとよく聞こえないんだけど?」

 ニヤリと意地悪く悪く彼女に思わずひっと息を呑み、言葉に詰まってしまう。

「続きは? どうなのよ?」
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