空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 麗波が執拗に部屋に入りたいと言っていたのは、彼と会うためだったらしい。与流さんがいなかったのは、彼と二人きりで会うためだったのだろう。

 でも、どうして麗波と凌守さんが?

 そこまで考えて、麗波が脳裏でニヤリと笑った。麗波は、凌守さんを私の恋人だと思っている。

 つまり、これはきっと、凌守さんを私から奪うため。

『あなたはまた、地獄を見るんだから』

 麗波が先程そう言ったのは、そういうことだったのだろう。

 だけど、まさか凌守さんに限ってそんなことはないと、心が言う。
 凌守さんは、あれだけ彼女のことを軽蔑していた。怒っていたし、私のことを守ると言ってくれた。

 そこまで思って、はっとした。

 もしかして、凌守さんは、私を守るために麗波と関係を――?

 一度気になると色々と勘ぐってしまい、二人が何をしているのか気になって仕方ない。部屋でないにしろ、個室を麗波に案内してしまったことを後悔するが、もう遅い。

 麗波と凌守さんが、二人きりでなにをしているのか、私に知るすべはなにもなかった。
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