空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 不安と後悔にさいなまれながら、私は職場であるホテルを出た。

 あれこれ考え、ぼうっとしていたらすっかり昼を超えてしまった。
 これから、東海林さんたちのいる市場に行って、シラスをもらう約束をしている。こんな時に行くなんてと自分でも思うが、同時に彼らのことを考えないようにするにはいいかも知れないと思う。

 気持ちを切り替え、マルマロスロードへ向かった。

 ホテルがオープンしてから、周りにカフェやお店が続々とオープンし、今では駅のこちら側もだいぶ栄えてきた。クリスマスの装飾も相まって、今の季節、街中は余計にきらきらしている。
 そんな街の様子が、私の心をいっそう暗くする。

 いや、何も考えてはダメだ。そう自分に言い聞かせ、マルマロスロードをリゾート方面へ向かって歩く。

 海に近いこの場所は、冬でも潮のにおいがする。だけど今日は風がなく、海も憎いくらいに穏やかだ。

 そんな海沿いのこの道には、散歩をするカップルが数組。
 私はわけもなく、コートを抱きしめるようにして歩いた。
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