空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
「嘘……」

 思わず声が漏れ、東海林さんと幸華さんを見る。二人は俯いたまま、膝に乗せた拳を握りしめ、ぐっと何かを堪えるように震えていた。

「海花ちゃん。本当にごめんなさい。私たちが、定一さんのこと黙らなければ……、定一さんは、罪を押し付けられなくてすんだのよ」

 幸華さんが言いながら頭を深く下げる。だけど途中で泣き出してしまい、ハンカチを目に押し当てていた。

「定一が職務怠慢なんてするわけが無いって、誰よりも海と船が好きなアイツがそんなことするはずないって、そりゃ思ってたさ。思ってた、けどよ……」

 東海林さんは言葉に詰まり、一度涙を袖でぬぐう。それから洟をすすると、続きを紡ぎ出した。

「金に目がくらんじまった。本当に、本当に申し訳ない」
「そんな……」
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