空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 色々なことを一気に聞いてしまったせいで、感情がぐちゃぐちゃになる。ただひたすら涙を流し続けていると、凌守さんがそっと切り出した。

「今回の件に関しては、運輸安全委員会(JTSB)に通報済です。すでに、重要事件として警察も動いており、他の船舶に関しても既に設計図との乖離を発見しています。全て御船伊の社長が関与している裏も取れています。彼が捕まるのは、時間の問題です」

 彼はそう言うと、伏し目がちに言う。

「あなたのお父様は、船乗りとしてとても正しいことをした。それなのに、あなたの父親を犯人だと仕立て上げ、送検してしまった。事件事故の事後処理や原因調査を行う海上保安庁としても、あるまじきことです」

 そこまで言うと、凌守さんは腰を折り曲げ、深く深く、私に向かって頭を下げた。

「大変、申し訳ございませんでした」
「そんな、凌守さんが悪いわけじゃないですから」

 慌てて口を開いた。だけど、凌守さんは頭を上げてくれない。
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