空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む

3 懐かしい記憶と彼の想い

 市場を出て、凌守さんと自宅までの道を歩いた。彼が送ると申し出てくれたのだ。

 人の多いマルマロスロードではなく、商業施設の裏の道を歩いてくれるのは彼の優しさだろう。たくさん泣いてしまったから、私は酷い顔をしているはずだ。

「凌守さん、ありがとうございました」

 優しい潮風に吹かれながら、ゆっくりと私の隣を歩いてくれる彼に告げた。

「お礼を言われることはなにも。むしろ、長年あなたのお父様の冤罪に気付けなかった。海上保安庁の落ち度で、本当に申し訳ないです」

 私は首を横に振った。

「それでも、凌守さんが事実を突き止めてくれました。父が無罪で、格好いい船乗りだったんだって分かったことがとても嬉しいんです」

 そこまで思って、はたと気づく。

「どうして、父の事件のことを調べてくれたんですか?」

 彼は『違和感を覚えた』と言っていたけれど、それはなぜ?
 すると、凌守さんは硬い顔をして、前を向いたまま言った。
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