空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
「俺たちが訴え続ければ、定一は送検されずに済んだかもしれない。しかも、そのせいで海花ちゃんが辛い目に遭っていたなんて、俺たちは全く知らず……本当に、悪いことをした」

 再び深く頭下げられる。
 胸にあふれるこの感情は、今すぐには整理できない。だけど、東海林さんたちが直接悪いわけではないということだけは理解していたから、私はゆっくりと口を開いた。

「東海林さんたちのせいじゃ、ないですから。悪いのは、全部、御船伊……」

 口に出したら、案外胸がすっとした。
 恨みや憎しみなどの感情よりもずっと、父が正義だったことに対する嬉しさの方が大きい。

 凌守さんの話によれば、御船伊は警察によって悪事を暴かれる。それは、私が制裁すべきことではない。

 やるせなさと悔しさを感じながら、だけと不思議と心は凪いでいた。
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