空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 恐る恐る頭を上げる。麗波の手のひらに乗っていたのは、母のペンダントだった。
 ドクリ、と、胸が嫌な音を立てる。

「はい。返していだけますか?」

 そっと口を開く。すると、麗波は私によく見えるようにペンダントを持つ手を下げてきた。

 私はペンダントに手を伸ばした。しかし、麗波はそれを握った手を高く上げる。

「ちょっと、勝手に触らないで」

 私の手は空を掴み、私はその場に倒れ込んだ。麗波は慌てて手を床についた私を睨みつけると、途端にニヤリと笑う。

「どうやって手に入れたの? 貧乏なあなたがこんなものを持ってるなんて、盗んだのかしら?」

 彼女の笑みに、胸がゾワゾワと嫌な風に騒いだ。
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