空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
「――すぐに向かいます。十五分ほどで出動可能です」 

 彼は難しそうな顔でそう言うと、電話を切ってこちらを向いた。

「お仕事ですか?」
「はい、すみません。今日はこのまま直帰の予定だったのですが、中型船が浸水事故を起こしているようで応援が欲しいと」

 そう言うと、彼は申し訳なさそうな顔をする。

「私は大丈夫です。凌守さんの助けを持つ人が、いるんですから」

 彼は私の言葉に目を見開くと、それからにこりと笑う。

「はい、行ってきます」

 そう言って、彼は道の向こうに走り出そうとする。私は思わず、彼を呼び止めた。

「凌守さん!」

 彼が振り返る。私は彼の元に駆け寄り、胸に下げていたペンダントを外して彼に差し出した。
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