空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 やがて〝みみずく〟が戻って来る。中にはパイロット、救急救命士の資格も持つ機動救難隊員、ホイスト隊員の三人が乗っていた。
 人数はいつもより少ないが、それでも行かなくては。

 海上から見下ろすと、巡視艇は避難者を乗せ、既に桟橋に接岸しているようだ。
 一方、遊覧船は二階部分も数センチほど沈んでいた。

 ホバリングによる強い風が波を立てては、船が波に飲まれ浸水スピードが早まるかもしれない。
 凌守も他隊員も、ヘリコプターを移動させながら素早く降りることが出来る、リペリング降下で遊覧船へと移動するのが良いと判断した。

 降下の準備を整え、ヘリコプターの扉を開き、(へり)に足をかける。
 ここから自身のタイミングを見計らい、一本のロープを頼りに船に降りるのだ。

 リペリング降下は、一度降り始めたら止まれない。タイミングを誤れば、船に降りることはできずに海に落ちてしまう。

 この瞬間はいつも緊張する。だけど、ヘリの上でロープを操ってくれる航空整備士、ホイスト隊員と己の勘を信じ、「GO」と縁を蹴って海へ飛び出す。
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