空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
「ああ。潮先は戻ってきた〝みみずく〟で本船に移動後、逃げ遅れの捜索をして欲しい」
「はい」

 凌守はマスクを準備しながら答えた。すると、上司は途端に声を潜める。

「遊覧船に乗っているはずの御船伊の社長と娘が、巡視艇にいないらしい」
「え」

 思わず準備の手を止め、顔を上げてしまう。しかしそれは一瞬。すぐに手を動かし始めた。

「警察が動いている。御船伊に気づかれたんだと思う」
「……承知しました」

 凌守は答え、格納庫から海を見つめた。

 御船伊は、自分が暴いた隠蔽の罪から逃れるために、死ぬつもりかも知れない。遊覧船と共に沈むつもりだとしたら、自分はそれを許さない。

 絶対に、命あるまま助けてやる。

〝みみずく〟が戻って来るのを待つ間、凌守は強く拳を握りしめていた。
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