空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 水が冷たい。ドレスがまとわりつく。だけどそんなことよりも、私は目を凝らした。

 ペンダントはどこ?

 落ちてゆくペンダントを見つけ、手を伸ばし、掴む。安堵すると、口からあぶくが溢れた。

 息が出来ない。苦しい。ごぶ、ごほ。

 海上の光がやたら遠くに感じ、それで悟った。このまま私も、海で死んでゆくのだ、と。

 そうだ、生きてゆくのが辛いなら、生きる必要なんてない。死んでしまえば、苦しまなくていい。

 それに、ここは何もかもを黒く飲み込む海。犯罪者の娘なんて、生きていたって迷惑をかけるだけだ。

 東海林夫婦への申し訳なさはあったけれど、そもそも犯罪者の娘を引き取って育てるというだけで、お荷物だっただろう。
 私がいなくなれば、あの二人はもっと自由に生きられるはずだ。今まで生きていたことのほうが、申し訳なかった。

 私はもがくのをやめ、人生の終わりを感じながら、父と母のところへ行けますようにと、そっと目を閉じた。
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