空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 彼は片手に、別の誰かを抱えていた。そちらの彼はスーツ姿で、ぐったりとしている。

「助けてください!」

 巡視艇の近くにいた、海上保安官に向かって叫ぶ。すぐに駆けつけてくれた彼らと共に、凌守さんの抱えていた彼を引っ張り上げる。与流さんだった。

「毛布を持ってこい!」
「あったかい場所に運ぶぞ!」

 そんな声が聞こえ、与流さんと思わしき彼が運ばれてゆく。
 凌守さんは軽々と桟橋に乗り上げ、私の隣に腰を下ろした。ボンベとマスクを外し、ドライスーツのフード部分も外すと、彼は一度ぶるりと震える。

 ――凌守さんだ。

 そう思ったら、止まらなかった。彼がびしょ濡れなことも忘れ、思わず抱きついた。
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