空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 波の音を聞きながら、懐かしいカフェにやってきた。地中海風のお洒落な外観のそこは、以前より賑わっているのを何度か目撃している。
 だけど、今日は違った。

「凌守さん、お店、お休みみたいです」

 海に面した大きな窓も、入口のガラス扉も、カーテンが閉まっていたのだ。
 しかし、彼は厭わずドアノブに手をかける。

「大丈夫です、海花さん」

 そう言って、彼が扉を開けると――。

 パン、パン!
 軽快なクラッカーの弾ける音に、私は肩を揺らした。クラッカーを握り笑顔を浮かべる、店主さんがいた。

「お誕生日おめでとう、海花ちゃん」

 そう言ったのは、東海林さんだ。お店の中はバルーンなどが飾られていて、まるで子供の頃の誕生日会のようだ。

「おめでとう、海花ちゃん」

 幸華さんもそう言って、私を祝福してくれる。見上げると、凌守さんがイタズラが成功したみたいにあどけなく微笑んでいた。
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