空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 私の声に反応して、彼が息を呑むのが聞こえた。しかしすぐ、聞こえるか聞こえないかくらいの声で、彼は言った。

「あなたなら、きっと今日を乗り越えられる」

 え、と思ったのも束の間、すぐに彼がこちらに近づいてくる気配がした。

 体が強張る。鼓動が早まるのは、否定されると思っていた言葉が否定されることも肯定されることもなく、ただ事実を認め、未来を生きろと言われているように感じたからだ。

「突然のご訪問で失礼しました。これ、ここに置いていきますね」

 顔を逸らせたまま胸の鼓動と戦っていると、ガサガサと隣にあるチェストで音がした。
 それからしばらくすると、扉が開いて「失礼しました」と彼が去っていく音がした。

 私は振り返り、彼がいないことを確認するとベッドから降りた。チェストの前に立ち、ペンダントを袋から取り出し手に乗せてみる。

 不意に、目頭が熱くなった。
 母の笑顔が脳裏に蘇り、東海林夫婦の安堵した顔が頭を過った。すると、なぜ死なせてくれなかったのかと問うた自分の身勝手さに後悔が訪れる。

 なんて失礼なことを、言ってしまったんだろう。
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