空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 道の向こうからこちらに走ってくるのは、肩幅のある長身の男性。そのシルエットには、見覚えがあった。
 しかし彼にそれを告げる間もなく、全速力で走ってくる彼は、驚き目を瞬かせた私の前で立ち止まる。

 見上げた彼は、必死の形相を私に向ける。
 慌てたように右腕を掴まれ、反動で右手に持っていたペンダントを落としてしまった。

「あの……」
「入水自殺なんて、絶対ダメだ」
「違います!」

 慌ててそう言うと、彼の目が見開かれる。
 街灯に照らされたその顔を見て、私は確信した。

 この背丈、この顔。あの頃よりも少し大人っぽい顔つきだが、間違いない。
 彼は、八年前、私を助けてくれた海上保安官だ。
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