空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
「失礼しました」

 彼は私からぱっと手を離すと、ペンダントを拾って手渡してくれた。

「すみません、驚かせてしまいましたね」
「いえ、私も悪いですから。きっと、八年前、あんなことを言ってしまったのを覚えていてくださったんですよね」

 私は手元に戻ってきたペンダントを見ながら、自嘲するように苦笑いを浮かべた。

 八年前、私が彼に言ってしまったこと。それは、今までの人生で一番後悔していることだ。

「俺のこと、覚えてらっしゃるんですか?」
「はい。私のことを助けてくれた、海上保安官の潜水士さんですよね」

 言いながら、顔を上げる。優しい潮風が海から吹いてきて、私の髪を揺らした。

「嬉しいです。俺、潮先(しおさき)凌守(りょうま)です。泊里海花さん」

 彼はにこっと爽やかに、優しい笑みを浮かべていた――。
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