空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
「あの日は、本当にすみませんでした」

 私はぺこりと頭を下げ、手元に戻ってきたペンダントに視線を向けた。
 私があの後、前を向いて生きてこられたのは、このペンダントと彼のおかげだ。

「それ、綺麗な宝石ですよね。自然光と人工灯で、色が変わる」

 彼の言葉にはっとし、顔を上げる。
 彼は私の手元にある、ペンダントトップの宝石をじっと見つめていた。街灯に照らされて、今は赤く輝いている。

「ご存知だったんですね」
「ええ。まるでたくさん表情を変える、海みたいです」

 彼のその言葉に、はっとした。どうして、母の言葉を……?

 そう思っていると、彼の手がペンダントに伸びてくる。私は思わずペンダントを握りしめ、胸元に寄せて身を引いてしまった。

「すみません、近づいたら汗臭いですね。ランニング中だったもので」

 彼はそう言うと一歩身を引き、苦笑いをこぼした。
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