空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
「きどう、きゅうなんし……?」

 聞き慣れない職業に首を傾げながら彼を見上げると、彼は優しく微笑んだ。

「ヘリコプターから海上の船や漂流物に、ロープ一本でしゅるるるーって降りていく救助現場、テレビとかで見たことはありませんか?」

 彼は言いながら、手でロープを伝うふりをした。その様子を見て、私は父の死んだあの日を思い出した。
 テレビ中継されていた、父の乗る船が燃えてゆく映像。その現場へとヘリコプターから降りてゆく、炎と同じ色の救助隊がいた気がする。

「オレンジの服の……?」

 自信が持てずに語尾を濁して言うと、彼の笑みがぱっと大きくなる。

「そうです、それ」

 彼が嬉しそうにそう言う姿は、なぜか凛々しくも見えた。

「そうだったんですね」

 私はもう一度空港の方を見た。あそこから飛び立つ光の中には、海で助けを待つ誰かの元へと急ぐヘリコプターがあるのかもしれない。
< 42 / 210 >

この作品をシェア

pagetop