空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
「あなたは、どうしてこちらに?」

 彼の質問に、自嘲の笑みが漏れた。

「仕事で異動してきたんです。そこのホテルに勤める予定なんですよね」

 私は惨めさから恥ずかしくなり、俯いたまま道の後方を指差した。

「イデアルヴィアですか。大きなリゾート会社ですよね。最近、御船伊重工にM&Aされたとか」
「はい。山間のホテルに勤めていたんですけど、なんていうか、ここに飛ばされたというか……」
「飛ばされた?」

 繰り返された言葉に、苦笑いがこぼれる。私はどれだけ惨めなのだろう。

「名目上は新規リゾートホテルのリーダーコンシェルジュへの昇進です。でもその実、失恋です。恋人にフラれてしまったんですけど、彼は私の私の上司だったので、同じ職場だと気まずいから、という理由だと思います」

 無理やり笑みを貼り付けて見上げると、彼は眉間に皺を寄せていた。
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