空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 やがて、マルマロスロードにやってきた。大型の遊覧船が停泊する予定の桟橋が、目の前に現れる。
 この間、凌守さんと再会したその場所を左に進んだ所、遊歩道沿いに木製のベンチがあった。
 前回来た時は暗くて気付かなかったが、このマルマロスロード沿いには、同じようなベンチが点々と置かれている。

 凌守さんに促され、そこに腰掛けた。凌守さんも、私の隣に座る。

 私は目の前に広がる海を見つめた。小さな船が何隻か浮かんでいる。あれは、漁船だろうか。
 胸はドクドクと鳴っていたけれど、恐怖に支配されることはなかった。凌守さんの大きな手がつながれたままだからだと思う。

 波の音や、カモメやチドリの鳴き声が聞こえ、ゆったりと時間が流れる。海岸から港へと姿はすっかり変わってしまったが、聞こえる音や匂いは昔と変わらない。

「大丈夫そうですね」

 右上から彼の声が聞こえて、私は頷いた。
< 53 / 210 >

この作品をシェア

pagetop