空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む

「この間まで、海を見るとすごく嫌な気持ちになったんです。でも、今はなんだか、懐かしい気持ちになりました」
「懐かしい？」
「はい。この辺りに、父と母と三人で暮らしていた頃のことを思い出しました」

　海辺にある懐かしい思い出。今、私はそれらを穏やかな気持ちで思い出すことができた。

「私、幼い頃はこの辺りに住んでいたんです。父も母も、海が大好きでした。私もかつては、この海が好きだったなあって」

　言いながら、胸元のペンダントを手に取った。海辺に行くならお守りにしようと、家から着けてきたのだ。
　柔らかな秋の日を浴びて、ガーネットが青色に輝いている。

「これ、母の形見なんです。母はサーファーだったんですけど、私が小学生の時に溺れた男の子を助けて、それで――。ちょうど、この辺りで亡くなりました」

　私は言いながら、かつて浜辺だったレンガの道に目線を向けた。