空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
「それで、あの言葉を……」

 凌守さんはなにかを考え込むような難しい顔をして、ぽつりとこぼす。私はあの日、彼にかけてしまった酷い言葉を脳裏で繰り返した。

『私なんて、死んでしまえば良かったのに』

 思い出すだけで胸が痛み、申し訳なさが募る。

「あのときは、本当にすみませんでした」

 頭を下げると、凌守さんはゆっくりと首を横に振った。

「いえ。あなたを助けられて、良かったです」
「本当に、ありがとうございました」

 あの日、私を救ってくれた言葉。彼がああ言ってくれなければ、私はずっと生きることに無気力なままだったと思う。
 言いながら手を開き、ペンダントを見つめた。
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