空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
「だから、『海が怖いところ』だと理解しているのは、とても大切なことです」

 言葉の最後で、凌守さんがこちらを見る。ばちりと目が合い微笑まれ、思わず胸が跳ねた。

「怖くていいんです。怖いところだと分かったうえで、好きだと思えるようになればいいと、俺は思います」

 見つめられ、鼓動が加速する。だけど同時に、なぜかすごく安心する。

「もう少し、海に近づいてみてもいいですか?」

 思い切って、提案してみた。今なら、大丈夫な気がする。
 凌守さんは目を見開いた。だけどすぐに笑顔になって、立ち上がる。

「もちろんです。あの桟橋に、行ってみましょうか」
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