空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 アルカディアポートの桟橋に就航予定の船はまだないから、今は誰もいない。
 凌守さんは手をつないだまま、私の少し先を歩き桟橋に乗る。私もそっと、足をかけた。

 ドクリ。心臓が大きく怯えた。恐怖に思わず目を閉じ、鼓動を落ち着けようと深呼吸する。
 その間、凌守さんはそこに佇み、私が歩み出すのを待っていてくれた。

「ゆっくりで大丈夫です。俺があなたを守ります」

 優しい声色に、繋がれた手から感じる温もり。ぎゅっと一段と強く手を握られ、離すまいという彼の意思を感じた。

「海上保安官ですから。機動救難士ですから」

 彼の言葉に、そっと目を開ける。優しく微笑む顔が、目の前にあった。

「はい」
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