空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 私の父は、犯罪者だ。しかも麗波の父が社長を務める、御船伊重工の所有する貨物船を、火災に追いやった張本人。

「犯罪者の娘に援助してこの学園に三年間も通わせてあげるなんて、お父様はどれだけ心が広いのよ。本当に理解できないわ」

 廊下の向こうから、麗波の苛立ちと憎しみがこもった声が聞こえ、ぴくりと体が震えた。
 だけど、事実だから仕方ない。私が高校受験に失敗してもなお、この学園に通えたのは彼女の父のおかげなのだ。

 父が船舶の火災事故を起こしたのは、私が中学三年になったばかりの春だった。
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