空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 小学六年の時に母が海で流された男の子を助けようとして命を落とし、それ以降、私は父と海辺の街で二人暮らしをしていた。
 海まで歩いて二分、走ればすぐに出られる場所に家のあった私は、海が大好きだった。

 船の機関士だった父は、一年の三分の一ほどしか陸上にいられない。共にいる過ごす時間は短かったが、それでも陸にいるときは存分に甘えさせてくれる父が、私は大好きだった。そして、海で機関士として働く父を、誇りに思っていた。

 だが、どうやら父は機関士という仕事を、軽んじていたらしい。

 父は自身が機関士を勤める貨物船の火災により、焼死。その後、運輸安全委員会の調査により、火災の原因が父の職務怠慢だと分かると、父は被疑者死亡で書類送検された。実質、犯罪者と同じだ。
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