空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む

　それからは、他愛のない話をしながら食事をした。

「アルカディアポートホテルって、屋上に大きなヘリポートがあるんですよね」

　会話の最中、不意に聞かれた。

「はい。大型のヘリコプターも止まれるみたいです。近くの医療機関とも連携していて、だからお客様に万が一のことがあっても安心して過ごしていただけます」
「なるほど」

　凌守さんは言いながら、窓の向こうの海を見た。国際空港に、飛行機が一機戻ってきたところだ。

「みみずくも止まれるって、うちのパイロットも言ってました」
「みみずく？」

　彼の口から出てきた鳥の名に、思わず首をかしげる。

「〝みみずく〟っていうのは、海上保安航空基地(うち)に配備されている中型ヘリコプター、スーパーピューマの愛称です」

　なるほど。それはつまり、凌守さんがお仕事で乗っているヘリコプター、ということだろう。