空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
「もしかしたら、お世話になることもあるかもしれませんね。まあ、ない方がいいんですけど」

 彼はそう言って、食べかけのパスタを口に運んだ。その顔は、どこか切なげだ。

「そういえば、もうすぐ合同海難救助訓練、ありますよね。〝みみずく〟も、さっそくホテルに止まるんじゃないですか?」

 不意に思い出し伝えると、彼は困ったような笑みを浮かべた。

「そうでしたね。でも、〝みみずく〟は訓練後、航空基地にすぐ戻ります。いつ、出動要請があるか分かりませんから」
「そうなんですね」

 私ががっかりしたと思ったのか、凌守さんは慌てて口を開く。

「でも、俺は訓練に参加するんで! 今年は初めてアルカディアポートで行うので、ちょっと緊張します」
「私もホテルのいちスタッフとして参加するので、よろしくお願いします」

 頭を下げると、彼も「こちらこそ」と優しく微笑んでいた。
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