空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 父の死後、私は父が海に出ている間にもお世話になっていた、漁師の東海林(しょうじ)夫婦の家で過ごすことになった。
 東海林さんは父と同級生で、奥さんの幸華(さちか)さんも母と同い年。私が幼少期から仲良くしてくれている、もうひとつの家族のような存在だ。

 彼らが私を引き取ってくれたのはありがたかったが、ショックで勉強に身に入らない日々。私は目指していた海洋系の高校に受からず、さらに滑り止めの高校も落ち、高校受験に失敗した。

 そんな私を気にかけてくれたのは、父の勤めていた御船伊重工の社長だった。彼は私の事情を知り、子どもの未来を潰してはいけないと、私の入学金と授業料を援助し、金持ちの名門高校、宮代学園へ入学させてくれたのだ。

 望んだわけではないが、高校浪人になんてなるわけにはいかない。なにより、父亡きあとに身寄りのない私を引き取ってくれた東海林夫婦に、これ以上迷惑と心配をかけるわけにはいかない。
 私は、宮代学園への入学を決めた。
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