空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
「どうしますか? ここから先は浜なので波も近いですし、それにその足元だと――」

 凌守さんは言いながら、私の足元のヒールに目を向けた。

「足なら平気です。それに、せっかくここまで来たので行きたいところがあるんですけど、いいですか?」

 そう言うと、凌守さんは目を瞬かせて、それから優しい笑みを浮かべた。

「もちろんです。海花さんの行きたいところなら、お供しますよ」

 凌守さんがそう言ってくれたので、私は浜辺に足を踏み出した。
 先ほどまでのしっかりとしたレンガではなく、ふわりとした砂のせいで足元が心許ない。きゅうっと、砂がヒールを飲み込む。 

 恐怖と緊張が少し戻ってきたが、ここまで歩いてきたおかげか酷く動揺することはなかった。
 凌守さんが、私の手をしっかりつないでいてくれる。だから、大丈夫だ。
< 72 / 210 >

この作品をシェア

pagetop