空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
「なんだかすみません。お魚、押し付けたみたいになってしまって」
「いえ、嬉しいです。アジは低タンパクで体にもいいですし。それに、海花さんはご両親亡きあとも、とても愛されていたんだと、知ることができました」

 にこっと優しく微笑んで、凌守さんが言う。

「はい。東海林さんたちには、いくら感謝してもしきれません」

 犯罪者の娘を、快く家に置いてくれた。それに、犯罪者の父のことを、いまだに『親友』と呼んでくれる。東海林夫婦がいなかったら、きっと今の私はない。

 嫌いで苦手で怖くて、近づくことを避けていた海。だけど、今日一日を通して、優しい思い出が脳裏にたくさん蘇ってきた。
 全て、凌守さんのおかげだ。

 帰路を歩きながら、彼を見上げた。その横顔は夕日に照らされて、凛々しく、とても格好良く見えた。
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